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読書感想文
 
アルフォンス・ドーデ「最後の授業」(フランス)を読む

 私はフランス語を習ったことがないが、フランス語が非常に論理的で美しい言葉であることは知っている。歴史上、フランスにおいて優れた数学者・哲学者・文学者が数多く輩出したのもむべなるかなである。
 フランス人はことのほかフランス語を愛し、フランス語は世界一の言葉だと自負している。日本のようになにかと英語を持ち上げることとは大きな違いである。
 フランス語を愛すフランス人であるが、もしフランス人にフランス語の使用をやめて今日からドイツ語を使えといったらどうなるであろうか。歴史上、実際にこのようなことが起こったのである。普仏戦争に敗れたフランスはパリを含めてプロシア(現在のドイツ)に支配され、フランスのある地域ではフランス語の使用が禁じられ、ドイツ語の使用を強制させられた。
 ドーデの「最後の授業」はフランス語から引き離されようとしているフランス人の深い悲しみを描いた名作である。
 私は今回初めてドーデの作品を読んだ。少年・少女にもわかる比較的やさしい内容の作品ではあったが、私は感動しそして深く考えさせられた。それは愛国心とは何かということについてだ。
 「最後の授業」の中で、小学校のアメル先生はフランス語について次のように述べている。

<そこで、アメル先生は、それからそれへと、フランス語についての話をはじめた。フランス語は世界じゅうでいちばん美しい、いちばんはっきりした、いちばんしっかりしたことばであること。だから、ぼくたちで、しっかりまもりつづけ、けっしてわすれてはならないこと。なぜなら、民族がどれいになったとき、国語さえしっかりまもっていれば、じぶんたちの牢獄のかぎをにぎっているようなものなのだから……。>(ポプラ社文庫『最後の授業』南本史訳)

 ドーデは1840年に南フランスで生まれた。家は貧しく大学にはいかなかったが、17歳の頃から文学の勉強を始めた。1870年の普仏戦争に参加し、その後に起こったパリ・コンミューンと政府との内乱も経験している。19世紀中葉のフランスはまさに激動の時代であったのだ。
 普仏戦争で勝ったプロシアはフランス全土を支配し、その中で、アルザスとロレーヌ地方はフランス語の使用が禁止された。その地方の人たちはある日を境にフランス語を話すのも書くのも禁じられたのである。フランス人にとってこれほど酷い仕打ちはほかにあるだろうか。「最後の授業」は戦争の悲劇をまざまざと見せ付けてくれる。

 フランツはアルザス地方に住む小学校の高学年の生徒である。フランツの住む町は森が多く、緑豊な美しい町である。
 その日もフランツは学校に遅刻した。いつもなら厳格なアメル先生に説教されるのであるが、その日は違った。アメル先生はフランツに席にすわるように命じた。
 教室のうしろのほうには、町の人たちがいた。今日はアメル先生の最後の授業の日なので、町の人たちは40年間子供たちの指導をしてきたアメル先生に感謝するためにきたらしかった。
 その日がフランス語が使える最後の日であった。普仏戦争に敗れたフランスにおいて、アルザス地方ではフランス語に変わってドイツ語の使用が強制された。
 アメル先生は今日の授業が終わったら町を去らなければならなかった。
 フランツは授業を受けながら深く後悔した。彼はまだフランス語の文法を理解していなかったのだ。フランス語の読本もすらすらと読めなかった。アメル先生に対してたいへんすまなく思った。
 アメル先生も後悔していた。もっと厳しく子供たちを指導すべきだと思ったのである。フランツがフランス語ができないのを自分の責任だと感じていた。
 いよいよ正午の鐘がなり最後の授業が終わるときがきた。アメル先生は黒板に大きく<フランスばんざい>と書いた。そして授業は終わった。

 「最後の授業」は国民がふだん使う言葉がどれほど大事なものかを痛烈に教えてくれる。国を愛するということは言葉を愛することだと私にはきこえる。
 「最後の授業」は10頁程度の短編であるが、この中に人間にとって本当に大切なものが詰まっている。

 
作文道場アルフォンス・ドーデ
1840年,南フランスのニームに生まれる。リヨン市の中学時代に一家が没落、57年、パリで文学の勉強を始める。58年処女詩集を発表。60年からから65年にかけて立法議会議長モルニ公爵の秘書をしながら文学の道に励む。「ル・プチ・ショーズ」「タラスコンのタルタラン」「月曜物語」「風車小屋だより」「アルルの女」などの作品を残し、1897年パリで急死。<ポプラ文庫「最後の授業」南本史著>より引用。
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