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読書感想文
 
ヘンリー・フィールディング「トム・ジョウンズ」(イギリス)を読む

 夏目漱石の「吾輩は猫である」「坊っちゃん」に見られるおもしろさそして滑稽さは一体どこからくるのであろうか。丸谷才一はフィールディングの「トム・ジョウンズ」と「坊っちゃん」の関連性についての評論を書いている。私は「坊っちゃん」のルーツを訪ねるつもりで、「トム・ジョウンズ」を読んだ。
 「トム・ジョウンズ」は長い小説であるが、すこぶるおもしろかった。漱石の作品と同じような雰囲気が醸し出されていたのには驚いた。さすが、丸谷才一だと感心した。漱石はおそらく、「トム・ジョウンズ」を深く研究し、そのおもしろさ並びに滑稽さを自家薬籠中のものにしたに違いない。
 作者のフィールディングは18世紀半ばの人であるが、「トム・ジョウンズ」は全く古めかしくはない。おそらくこの作品には小説が本来もつ普遍的なテーマが内包されているからであろう。そのテーマとは人生いかに生きるべきかということである。ただ、フィールディングはこのテーマを理想と現実を織り交ぜて描いている。ときどき説教じみたことをいうが、堅苦しくはない。ユーモアがそこはかとなくきいていて、嫌味なく読むことができる。間違いなく、大がつくほどの傑作である。モームはこの作品を世界10大小説の1つに数えているが、頷ける。
 「トム・ジョウンズ」はおもしろいこともさることながら格調高い作品である。格調高くしているのは、広く深い教養がベースになっているからである。日本の明治の作家たちは教養をベースに作品を書いている。彼らは必死になって「トム・ジョウンズ」のような教養小説を勉強したからであろう。18世紀半ばに「トム・ジョウンズ」のような作品が生まれたことに私はイギリスという国の文化・文明の高さを思わずにはいられない。

 「トム・ジョウンズ」はトム・ジョウンズが生まれてから結婚するまでの物語である。
 トムは捨て子であった。大地主のオールワージが長い旅から家に戻ってくると、自分の寝室のベッドに生まれたばかりの赤ん坊が寝ていた。この子がトムであった。
 オールワージの肉親は妹ただ一人だけであった。妹は結婚し、息子を一人生んだ。息子の名はブライフィルである。オールワージは心が広く、慈善家であった。トムを実の子のように育て、妹もトムを大事に育てた。だが、トムはいかんせん捨て子であったので、オールワージの遺産を相続することはできなかった。妹夫婦が死に、オールワージの遺産相続人はブライフィルただ一人になった。
 オールワージの広大な地所の隣はウェスタン家の地所になっており、ウェスタン家も大金持ちであった。ウェスタンには妻がなく、一人娘がいた。名をソファイアといって、たいへんな美貌の持ち主であった。心は清く、曲がったことの嫌いな性格であった。
 トムは立派な青年になった。ハンサムで心がやさしく力持ちであり、喧嘩が強かった。貧しいものたちや弱い人たちに対してはいつも憐憫の情を示した。ただ、トムには欠点があった。それは女にだらしないことであった。
 当然のように、トムとソファイアは恋仲になったが、オールワージとウェスタンがその結婚を許すはずがなかった。特に、ウェスタンが強行に反対した。ウェスタンはソファイアをブライフィルと結婚させようとした。オールワージはトムを家から追い出さざるを得なかった。トムは家を出た。そして、ソファイアもトムのあとを追うようにして家を飛び出した。トムもソファイアもロンドンを目指した。
 トムとソファイアにはそれこそたくさんの事が起こるのであるが、最終的に二人は結婚することになった。トムがオールワージの妹の実子、すなわちオールワージの甥であり、ブイライフィルの兄弟であることがわかったからである。妹は死ぬ間際、弁護士に真実を打ち明けたが、弁護士はブライフィルに言っただけであった。ブライフィルは弁護士に口止めをし、オールワージには黙っていた。オールワージはこのことを知り、ブライフィルと縁を切り、財産はすべてトムに引き継がれることになった。

 「トム・ジョウンズ」は正真正銘、小説のおもしろさを満喫させてくれる作品である。

 
作文道場ヘンリー・フィールディング
1707年 -1754年。1イギリスの劇作家、小説家。「イギリス小説の父」と呼ばれ小説『トム・ジョーンズ』が代表作です。
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