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読書感想文
 
プロスペル・メリメ「カルメン」(フランス)を読む

 人間は完全に自由な存在として生きていけるのであろうか。自由に振まったおかげで、逆に縛られることもある。男と女の関係がいい例である。お互い愛し合えば合うほど相手の自由を奪いたくなるものだ。
 しかし、愛が自由を奪うことはひじょうに人間的なものであり、だからこそ古今東西の小説のテーマになってきた。ドストエフスキーの「白痴」、スタンダールの「赤と黒」そしてメリメの「カルメン」では、最後、男が愛する女を殺す。愛の行きつくところが殺すことであったのだ。
 「カルメン」は小説よりオペラの方が有名であるかもしれない。あのビゼーが作曲したリズミカルな曲は誰もが一度は聴いたことがあるに違いない。このオペラの原作がメリメの「カルメン」である。
 メリメはフランスの作家である。私がメリメの名前を知ったのは太宰治の作品からである。太宰は自分のことを怠け者みたいにいうが、実際にはたいへんな読書家であり、勉強家であった。太宰はメリメを高く評価していた。
 メリメの「カルメン」は傑作である。傑作の上に大がついてもいいかもしれない。読んだあとも長い間感動の余韻が残った。男と女の究極的な愛の形が見事に描かれている。しかも、「カルメン」は単なる男と女の恋愛を書いたものではない。歴史そして神話がベースになって「カルメン」の世界が写しだされている。メリメはすぐれた考古学者であった。その教養の広さが作品には遺憾なく発揮されている。メリメは考古学の研究のために何度かスペインを訪れている。そのとき女の友達から聞かされたのが山賊の話である。「カルメン」はその話がベースになっている。

 「カルメン」は作者(メリメのこと)の語りですすめられる。作者が考古学の研究のためスペインのある地域を旅行中、山の中である男に出会う。その男はやつれていた。作者は男に葉巻をやり、そして食事を与えた。作者とホセと作者の旅の案内人がその日は一緒に宿に泊まった。
 男は名うての山賊のドン・ホセであった。ホセは指名手配中の犯罪者で、彼の居所をお上に知らせると多額の報奨金がもらえた。案内人はお金に目がくらんでこっそりとホセのことを近くの槍騎兵の屯営所に知らせに行った。作者はそれに気がつき、ホセにまもなく槍騎兵が押しかけてくることを伝えた。ホセはうまく逃げた。それと同時に作者に対して強い恩義を感じた。
 それから数日してドン・ホセは死刑囚として投獄された。作者は死刑執行の前にホセに会い、そして彼から身の上話を聞いた。
 ドン・ホセは名前が示すように一応貴族の出身であるが、若いとき、喧嘩をして故郷を出なければならなかった。ホセは騎兵として連隊に入隊した。そこで出会ったのがジプシー女のカルメンであった。カルメンは傷害の罪で連隊につかまった。カルメンを監獄に送るのがホセの役目であった。ホセはうまく丸め込まれ、カルメンを逃がしてしまった。ホセは連隊から懲罰を与えられた。
 カルメンはホセに惚れた。ホセもカルメンのことが忘れられなくなった。カルメンは情熱的な美人であった。カスタネットの伴奏で腰を振らせる踊りを踊った。その踊りが男を魅了した。
 ホセは連隊から逃げ出し、カルメンと行動を伴にするようになった。2人は夫婦になった。ジプシーのある者たちは密輸で暮らしていた。カルメンもその1人でホセも密輸をした。それをきっかけに、ホセは奈落の底へ落ちていった。カルメンはホセにとって悪魔のような女であった。ホセは魂まで吸い取られてしまった。気がついてみるとホセは平気で人を殺す極悪人になっていた。ホセはますますカルメンのことを愛した。
 カルメンは自由な女であった。人から指図されることを極度に嫌った。恋愛感情も同じであった。彼女はある闘牛士が好きになった。ホセは嫉妬に狂い、カルメンを責めた。カルメンはホセのいうことに反発した。そのあげく、ホセはカルメンを小柄で刺して殺してしまった。ホセは自首をした。

 カルメンの踊りはどれほど男を魅了したであろうか。カルメンは人を殺すのに何の躊躇もなかった。まさに悪魔が美人の仮面をかぶっているような女であった。そのような女に惚れて身を持ち崩したドン・ホセを作者のメリメは私の友といっている。このメリメの姿勢が「カルメン」を傑作にしているのは間違いないであろう。

 
作文道場プロスペル・メリメ
 1803年-1870年。フランス生れ、考古学者、スタンダールらと共に自由主義的な一派を形成し、スペインの女優の作品の仏訳と偽った「クララ・ガルスの戯曲」(1825)を処女作に、長編歴史小説「シャルル九世年代記」、短編小説「モザイク」など傑作を発表した。'34、史的建造物監督官に任命されてからは欧州各地を旅行するかたわら「カルメン」などを発表。'53年上院議員就任後はもっぱらロシア文学の紹介に努めた。<新潮文庫、「カルメン」堀口大学/訳 より引用>
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