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読書感想文
 
スタンダール「赤と黒」(フランス)を読む

 名作といわれる小説の中には、題名と内容との関係がまったく理解しがたいものがある。さしずめスタンダールの「赤と黒」はその筆頭であろう。初めて「赤と黒」を読んだとき、私はこの題名の由来を考えたものだが、よくわからなかった。
 通説によれば、赤は革命そしてナポレオンの時代のすばらしい時代、黒は王政復古の暗い時代を象徴しているようだ。だがはたしてそうなのだろうか。私には他に違った意味があるように思えるのだが。
 「赤と黒」は政治を諷刺する小説として書かれたらしい。スタンダールは自由主義者でナポレオンをこよなく敬愛していた。ナポレオンが失脚すると、それまで亡命していた貴族や聖職者たちがフランスに舞い戻り、政治を古い時代のものに戻した。スタンダールは王政復古の政治を痛烈に批判するために「赤と黒」を書いたのであるという。スタンダールはこの作品を書くことによって時代の真実を書こうとした。
 確かに、「赤と黒」は政治について書かれた小説であることに、私は疑義を抱いてはいない。ただ、「赤と黒」が単なる政治諷刺小説ならばこれほど長く世界中の多くの人に読み継がれることはなかったであろうと思う。スタンダールの死後、「赤と黒」が世界の最高傑作の1つに数えられたことに、スタンダールはどう思うであろうか。
 やはり、私は「赤と黒」は恋愛小説であると同時に、下層階級のハンサムで野心家の青年が上流階級の美貌の女性との危険な恋を通して大出世し、そして挫折していくという要素を持った小説だと思う。この小説は現実的でスリリングであるのだ。
 大学生のとき、「赤と黒」を読み終えて、私はジュリアン・ソレルという名を強烈に胸に刻みつけた。私にはアラン・ドロンが演じた「太陽がいっぱい」の貧乏でハンサムな主人公とジュリアン・ソレルが重なって見えた。

 ジュリアン・ソレルは材木屋のせがれであった。天と地がひっくり返っても貴族になれる身ではなかった。
 だが、ジュリアンはラテン語がよくでき、そして美男子であった。彼は19歳のとき、町長の家の家庭教師になった。町長の夫人はレナールといって、30歳でとても美しい人であった。ところがレナール夫人は男にはうぶで、恋をしたことがなかった。
 ジュリアンとレナール夫人は熱烈な恋に落ちた。それは危険極まりなかった。この関係は町長の知るところとなり、ジュリアンは町を出ざるを得なかった。
 その後、ジュリアンは神学校に入学し、神父になることを目指した。ジュリアンは優秀な成績を修め、政府の要人であるラ・モール侯爵の秘書となった。ジュリアンは仕事がよくできたので、ラ・モール侯爵の信用を得た。
 ジュリアンはラ・モール侯爵の美人で高慢な1人娘マチルドと関係をもった。マチルドは妊娠し2人は結婚しようとした。ラ・モール侯爵は断固として結婚に反対し、ジュリアンを責めた。マチルドは父親を説得し、2人は結婚することにした。ラ・モール侯爵はジュリアンを貴族にしようとした。
 ラ・モール侯爵はジュリアンのことを調べようとして、レナール夫人にジュリアンがどのような人間かを問う手紙をだした。その返事には、ジュリアンはただ女を利用して出世を図る卑しい人間だと書かれていた。実は、この手紙はレナール夫人が教会の人間に騙されて書いたものであった。
 ラ・モール侯爵は結婚を破談にし、ジュリアンを追放した。ジュリアンはすぐさまレナール夫人のもとへ行き、彼女が教会でお祈りをささげているとき、後ろからピストルで2発撃った。弾は命中したが、命には別状なかった。
 ジュリアンは裁判にかけられ、死刑になった。レナール夫人は元気になったが、ジュリアンが死刑になった3日後に死んだ。

 「赤と黒」は実際にあった事件をスタンダールが脚色して小説にしたものである。私にはレナール夫人がたいそう魅力的に写った。
 ジュリアンはレナール夫人が憎くて殺そうとしたのではなく、彼女との恋を成就するために一緒に死のうとしたと私には思える。

 
作文道場スタンダール
1783年 - 1842年。東南フランス、ドーフィネ地方のダルノーブルに生まれた。本名はマリ=アンリ・ベール(Marie Henri Beyle)。ナポレオン遠征軍に参加していた陸軍士官時代ミラノに入城し、以来熱烈なイタリア賛美者となる。ミラノでの恋愛体験をもとに著した『恋愛論』、あるいは意志と情熱に満ちた人物の若々しい行動を描きあげた『赤と黒』や『パルムの増院』など、その著作はロマン主義とリアリズムにまたがる近代文学最も偉人な先駆とされる。<新潮文庫「赤と黒」小林正訳>より引用。
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