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読書感想文
 
高山樗牛「瀧口入道」を読む

鶴岡市鶴岡公園にある胸像 とにかく森鴎外の博学多才ぶりは度を超えていた。鴎外と論争をするものは稀で、たまに文学界の大御所の坪内逍遥がした。有名な没理想論争である。これとても鴎外の圧勝という感じがする。
 ところが鴎外に果敢に論争を挑んだ青年思想家がいた。高山樗牛である。高山は思想家であり文芸評論家であり哲学者であった。鴎外とは美学について論争をした。これは互角の戦いであった。鴎外と論争をしてひけをとらなかった高山は文学界で重きをなした。
 高山は1871(明治4)年に山形県鶴岡市で生まれた。鴎外より9歳年下である。幼い頃は神童と謳われた。東京帝国大学文科大学哲学科を卒業する。高山も広く深い知識の持ち主で、日本・中国の古典ばかりでなく、西洋の思想にも造詣が深かった。特にニーチェには傾倒し、ニーチェ研究の第一人者でニーチェを本格的に日本に紹介した。
 高山は文芸評論家でもあるが、小説も書いている。大学時代に小説を読売新聞の懸賞小説に応募して入選した。それが「瀧口入道」である。この作品は新聞に連載されたが、匿名であった。「瀧口入道」が高山の作品であることが広く世に知られるようになるのは高山の死後である。高山は31歳の若さで死んでいる。
 「瀧口入道」はロマンあふれる悲恋物語である。格調高い文語文で書かれている。題材は「平家物語」からとっている。

 平清盛が権勢を振るっていたとき、平重盛の配下に斉藤滝口時頼という侍がいた。時頼は重盛の信任が厚く、ゆくゆくは重盛の嫡男の維盛の補佐を務めるはずであった。
 時頼はある日、清盛の屋敷で行われた花見の宴で建礼門院の雑仕(ぞうし。宮中や貴族の家で雑役を勤めた身分の低い女官のこと)である横笛を見て、横笛に恋してしまう。
 それからの時頼はつねに横笛のことを思い焦がれ、横笛に何度も手紙を書いた。しかし、手紙の返事はこなかった。思い余った時頼は父親に横笛と結婚したいと願いでるが、父親は激怒して、結婚を許さなかった。
 覚悟を決めた時頼は横笛のことをあきらめ、出家して嵯峨に庵を構えた。実は横笛も時頼のことは恋していて、横笛は嵯峨に時頼を訪ねる。時頼は頑固として横笛には会わなかった。悲観した横笛は自らも出家したが、まもなくして死んでしまう。
 時頼は嵯峨を去り、高野山に移った。時代は下り、権勢を誇った平家も清盛が死ぬと衰退の道を辿った。平家は源氏の攻撃を恐れ、京都を後にして西国に下った。平維盛は平家の総帥として兵の指揮にあたっていた。平家は追い詰められて四国の屋島まできた。この屋島で大決戦が起こるのだが、何と維盛はこっそりと屋島から逃げ出した。維盛は京都に残してきた妻子に会いたくて瀬戸内海を渡り、まず、高野山に向かった。高野山には昔、自分の父重盛に従った時頼がいると思ったからだ。
 維盛は時頼に会うことができた。時頼はまさか維盛が自分を訪ねてこようとは夢にも思わなかった。時頼は京都に行きたいという維盛の願いをきいて落胆した。今、平家の武士たちは屋島で戦っているのである。平家の総帥である維盛が戦場を抜け出して妻子に会うなどもっての他であった。時頼は懇々と維盛を諭した。
 時頼に諫言された維盛は熊野に向かった。それを察した時頼は維盛を追ったが、遅かった。維盛は熊野の海に入水して死んでいた。時頼は無常を感じ、自らも自刃して死んだ。
 「平家物語」と「瀧口入道」では大きく違っている点がある。それは、「平家物語」では時頼は自殺しないのであるが、「滝口入道」では時頼は自殺する。まして、「平家物語」では時頼が維盛を諭す場面はないのに、「滝口入道」では、時頼は維盛を懇々と諭す。
 高山樗牛は日本主義を唱えた人である。仏教は元来日本のものではない。日本で独自に形成された武士道を、高山は仏教を超えるものとしたのであろうか。出家した時頼も武士道の人だったのである。

※:写真は、鶴岡市鶴岡公園にある胸像です。

 

※:写真は、鎌倉長谷寺にある高山樗牛ここに住むの石碑です。

 
作文道場高山 樗牛(たかやま ちょぎゅう)
1871年2月28日(明治4年1月10日) - 1902年(明治35年)12月24日 。
羽前国鶴岡(現・山形県鶴岡市)に生まれ。
福島中学中退、東京英語学校を経て仙台の第二高等学校に入学、井上準之助が同級生。明治時代の日本の文芸評論家、思想家。東京大学講師。文学博士。明治30年代の言論を先導した。東京帝国大学文科大学哲学科に入学。土井晩翠が級友。
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