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読書感想文
 
竹中平蔵 榊原英資「絶対こうなる日本経済」を読む

 1989年の年末の株価は39,000円近くまで上がりピークに達した。新聞の経済欄ではエコノミスト・経済評論家と言われている人たちが来年は株価はもっと上がると力説した。中には株価は80,000円まで上がると言うものさえいた。私の知る限りでは株価は来年から下落すると言う人は一人もいなかった。
 結果はいかに。周知のように株価は翌年から下がり始め、それに伴ない日本経済も下降し始め長い不況になった。いざなぎ景気を超えた時期もあったらしいが実感はない。不況は2年前のリーマン・ショックで拍車がかかり、かくして1990年から2010年までを失われた20年と人は言うようになった。
 私はバブルが崩壊してからエコノミスト・経済評論家と言われる人たちのことを全く信用しなくなった。株価が80,000円になるといった経済評論家はその後も何食わぬ顔でかつ大家気取りで日本の行く末を論じている。エコノミスト・経済評論家たちは私にとってはさしずめ占い師みたいなものである。
 現在の日本経済は深刻である。一人当たりのGDPも日本の国際競争力も20年前と較べるとはるかに劣っている。日本はこのまま落ち続ければ3等国になってしまうのか。日本の将来に対しては悲観論が目立つ。その原因は国の財政状態が悪化していることらしい。国債発行残高はうなぎ昇りに昇り、近い将来国の借金が国民の金融資産を超え、日本はいよいよ沈没するかもしれない。
 日本はこんな状態であるが、エコノミスト・経済評論家の意見はまさに百花繚乱である。日本は破産するという意見もあれば日本は大丈夫強い日本が復活するという意見もある。円高に関して言うと、円高は日本を危機に陥れるという意見が大勢を占めるが、円高は日本にとってチャンスだという意見もある。とにかくいろいろな意見がある。私たちは一体何を信じたらよいのだろうか。
 私は本当に思う。経済学は科学なのだろうかと。経済学が科学ならば経済評論家たちの意見が両極端になるはずがない。デフレを解消するには金融政策が一番だと日銀を非難する今はやりの流行経済評論家は言うが、金融政策は効き目がないと言う経済評論家もいる。
 私たちは何を信用したらよいのかと考えていくうちに私は一つの結論に達した。現在とはまさにいろいろな情報が飛び交い、私たちはそれらの情報に右往左往するのではなく、それらの情報を分析する能力をもたなければならないという結論である。結局判断するのは誰でもなく自分であり、自分の力で判断するのである。だからこそ私たちは力をつけなければならない。ただ、いくら力をつけても提供される情報がいいかげんなものなら分析はできない。

 田原総一郎が司会をし、榊原英資・竹中平蔵が対談した内容をまとめた「絶対こうなる日本経済」(アスコム)はいい情報を私たちに与えてくれるという意味で名著である。この本を読むと現在の日本の状況がよくわかる。
 榊原も竹中も非常に頭の切れる人たちであり、実際に国の政策に携わっていた経験をもっている。その話には説得力がある。榊原と竹中の意見は一致する場合もあり、食い違うこともあるが、私はどちらの意見にも与しなかった。ただ、彼らの意見がこれからの日本を考える上で大変参考になったことは確かである。
 この本の中で私が一番感銘したのは、竹中がシュンペーターの「資本主義はその成功ゆえに亡びる」という言葉を引用していることである。私はなるほどと思った。

 現在の日本経済・世界経済を論じる上では、エコノミスト・経済評論家は断定的に予想するのではなく、私たちが考える上でのヒントになる情報を提供すべきであろう。「絶対こうなる日本経済」にはいい情報が詰まっている。田原の質問はたいへん適確である。

 
作文道場竹中平蔵 (たけなかへいぞう)。
1951年、和歌山県生まれ。一橋大学経済学部卒業後、日本開発銀行入行、81年に退職。その後、ハーバード大学客員准教授など歴任。98年に「経済戦略会議」メンバーとなる。2001年には小泉内閣で経済財政政策大臣就任し、金融担当大臣、経済財政政策・郵政民営化担当大臣、総務大臣を務め、「構造改革」を主導した。
榊原英資(さかきばらえいすけ)。
1941年、東京生まれ、東京大学経済学部卒業。大蔵省入省。ミシガン大学で経済学博士号取得。IMFエコノミスト、ハーバード大学客員準教授、大蔵省国際金融局長、同財務官を歴任。97年〜99年財務官を務め「ミスター円」の異名をとる。(「絶対こうなる日本経済」より抜粋引用)。
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